【女性側】熟年離婚を考えています。今後の生活していけるでしょうか。【統計数値から】
熟年離婚を考えています。将来の生活が不安です。
弊所では、女性から熟年離婚のご相談をいただくことが多々あります。
離婚をしたいと考えている方、離婚を求められている方、夫に不倫が判明し離婚を考えている方等、事情は様々ですが、皆様口をそろえて、「将来の生活が不安」とおっしゃいます。
不安に感じるのは、当然のことです。
現在の日本社会では、夫が正社員として働き、妻が非正規雇用で働くという形態が多く、ほとんどの方が夫の収入に生活を依存しています。
そして、財産に関しても、夫名義の財産がその大半を構成します。
心配を完全に解消するものではありませんが、将来必要な金額を整理することによって、より具体的に今後の生活を検討できるようになります。
実際に考えてみましょう。
ご注意~このコラムで記載されている金額はあくまで統計上の数値です。
このコラムでは、将来の年金額や生活費などを具体的な金額で記載していますが、この金額が「正しい」「必要である」という意味ではありません。
あくまで、統計資料に基づく概算であり、読んでいただける方が具体的に理解しやすいように記載しているにすぎません。
家族構成、地域、その他事情によって、計算は全く異なります。ご自分で必要な生活費を想定して当てはめてください。
まず、年金受給後の見込み金額を把握することで、今後生活のために必要な金額を逆算してみましょう。
現在、年金分割という制度があります。年金分割の制度については「7 年金分割を求めたい・求められた」をご覧ください。
日本年金機構では、年金分割のための情報通知書を取得する際に、「50歳以上の方で老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている方」については、対象期間(婚姻期間)の按分割合を50%とした場合の老齢厚生年金の見込額を計算して教えてくれます。
現在の実務では、対象期間(婚姻期間)の按分割合を50%で合意することが通常です(裁判所の審判において按分割合が50%以外となることが非常にまれであるため)から、65歳以降の年金の受給金額はある程度推測することができます。
そうしますと、「64歳までの間に必要な生活費」、「65歳以降に年金では足らない生活費」が概ね算出できることになります。
例えば、55歳の方で、将来の年金受給見込み額が10万円、必要な生活費が月額15万円(2019年度の総務省統計局「家計調査」の「第2表 男女,年齢階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(単身世帯)」「単身世帯」「60歳~」「女性」の消費支出が14万6425円)であった場合には、次の表のとおりと算出できます。
なお、夫の社会保険の扶養になっている場合には、離婚により国民年金、国民健康保険(収入により金額が変動します)の負担が生じる可能性があります。
現在の職場で社会保険に加入できない方は、国民年金(令和2年度は月額1万6540円)国民健康保険(収入により変動)の負担を考慮しなければなりません。
64歳までの間に必要な生活費 | 月額15万円×12か月×9年 =1620万円 |
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65歳以降に年金では足らない生活費 | 月額5万円 |
次に、今後の就労見込みを考えてみましょう。
次に、今後の就労見込みを考えてみましょう。
現在パートに出ている方であれば、継続して雇用が見込まれる場合も少なくありません。
例えば、先ほどの例で、64歳までパートで手取り月額8.4万円(総務省統計局の令和元年賃金構造基本統計調査(短時間労働者)「産業別 第1表 短時間労働者の年齢階級別1時間当たり所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」「企業規模計(10人以上)」の「産業計」「女性計」「60歳~64歳」の所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額を年額換算すると127万3505円、厚生年金加入の場合には各所税負担を考慮すると手取りは約8.4万円)を得られる見込みである場合には、907万円(=月額8.4万円×12か月×9年)は「65歳までの間に必要な生活費」として確保していることになります。
そうしますと、結局、「65歳までの間に足りない生活費」が713万円(=1620万円-907万円)ということになります。
50代に入ってから、パートを探すのは容易ではないですが、定期収入を確保することは重要であることがわかります。
64歳までの間に足りない生活費 | 713万円 |
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65歳以降に年金では足らない生活費 | 月額5万円 |
最後に、離婚によって受けることになる金銭給付を考えてみましょう。
離婚において、今後の財産状況に影響する給付項目が主に2つあります。
一つ目は、「①婚姻費用」です。別居から離婚までの間、収入が高い方の当事者は低い方の当事者に対して「婚姻費用」の支払い義務を負います。
婚姻費用の詳細については「2 生活費(婚姻費用)を請求したい、または請求された」をご覧ください。
二つ目は、「②財産分与」です。財産分与の概要に関しては、「なるほど!よく分かる財産分与」、「熟年離婚の注意点」をご参照ください。
熟年離婚では、企業年金、個人年金、退職金等、財産分与に関して大きく影響する項目があります。
個別の項目についてお知りになりたい場合には、「企業年金・個人年金は財産分与でどのように考えますか?」、「退職金は財産分与の対象となりますか。」も併せてご参照ください。
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