企業年金・個人年金は財産分与でどのように考えますか?

企業年金とは各企業が私的に行っている年金制度です。

まず、企業年金とは何でしょうか。

企業年金とは、公的年金(国民年金、厚生年金)とは別に、一般企業が従業員を対象して退職後に支払う年金制度の総称です。年金制度はよく「3階建て」のうちどこかという表現がされますが、「3階」の部分に属するものです。

企業年金は、厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金等の法律上の制度を利用しているものがほとんどです。ただし、この中で、厚生年金基金に関しては、近年解散が続いており、確定拠出型年金に移行しています。現存するのは、令和元年(2019年)6月1日時点でわずか8件です。

そのため、以下に関しては、確定給付企業年金、確定拠出年金に絞ってご説明します。

では、企業年金は、財産分与上、退職金に類似するものとして評価されるのが一般的です。

基本的な考え方としては、厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金のいずれも同様です。

企業年金は、一般企業が従業員の在職中に従業員のために積立て、退職後に年金として支払う性質のものです。婚姻期間中に夫婦が稼ぐことができるのは、夫婦の貢献があってのものと考えるのと同様に、婚姻期間中に掛けられた掛金は共有財産の一部として評価されることになります。

そのため、退職金に類似するものとして財産分与において考えるのが一般的です。

確定給付企業年金の財産分与の評価方法は一時金から算出します。

確定給付企業年金は、退職金と同様に、将来一時金として給付される金額を算出し、一時金の金額を婚姻から別居までの期間で割り付けて、共有財産の評価額とするのが一般的です。

例えば、一時金の金額が900万円で、婚姻から別居までが25年、在職(見込み)期間30年である場合には、750万円(=900万円÷30年×25年)が財産分与の基準となる共有財産としての評価額と考えられます。

ただし、企業年金に関しては、退職後にならなければ受給できない年金です。そのため、審判や判決においては、中間利息を控除して算出されたり、離婚時点で財産分与可能な財産がない場合には将来給付の審判や判決となる可能性がある点は注意が必要です。

確定拠出年金の財産分与の評価方法は確立した方法はありません。

確定拠出年金は、確定給付企業年金と異なり、今後の運用次第で、金額が異なるということになります。

つまり、離婚時点での掛金総額ベースで考えるのか、評価額で考えるのかという問題が生じます。

すでに退職しており、年金として受給している人の場合には、離婚時点での評価額で考えるのが合理的でしょう。

しかし、退職前に財産分与を行う場合には、将来の価格変動を考慮に入れる必要があります。また、掛け金の総額と現在の評価額との乖離が生じているケースも考えられます。特に、運用期間が長く、元本保証型資産よりも株式の比率が高い場合には乖離が大きくなり得ます。

掛け金の総額と現在の評価額との乖離の程度や退職までの期間を考慮しながら、事案ごとに判断していくよりないと考えます。

同じ「年金」という名前ですが、個人年金はどのように考えたらよいのでしょうか。

「個人年金」の性質について考えてみましょう。

個人年金とは、主に保険会社が販売している掛金積立型の保険商品です。「年金」という名前がついているように、年金(保険金)の支払い開始は60歳から65歳とされるものがほとんどです。

財産分与を考えるにあたっては、その保険商品という性質から、他の生命保険と同様に解約返戻金を共有財産の評価額として考えることになります。

もちろん、他の生命保険と同様に①婚姻期間の割り付けを行い、②原則として別居時点での解約返戻金の金額を評価額として評価すべきと考えます。

個人年金に関しては、「年金」と記載があるものの、保険として考えることが一般的です。

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