婚姻費用や養育費を支払っていますが、大きな減収がありました。どのように対処したらいいでしょうか。

婚姻費用や養育費を支払っていますが、大きな減収がありました。どのように対処したらいいでしょうか。

婚姻費用や養育費を支払う期間は、ときに長期間に及ぶため、当事者に大きな減収が発生することがあります。

特に、コロナウィルスによる収入減少により、婚姻費用や養育費を支払うのが苦しくなったというお問い合わせを頻繁にいただきます。

婚姻費用や養育費が決定している場合と決定していない場合に場合分けをして、説明したいと思います。

婚姻費用や養育費の金額が決定していない場合

まず、当事者間で、婚姻費用や養育費の金額が決定しておらず、協議や調停中に減収が見込まれた場合にはどのように考えるのがよいでしょうか。

婚姻費用や養育費は、実務上、司法研修所による新算定表「標準算定方式・算定表(令和元年版)」をベースにして協議されることが通常です。

「標準算定方式・算定表(令和元年版)」では、現在の収入金額を算定するにあたり、給与所得者に関しては直近の源泉徴収票の「総支給額」を基準として算定を行います。

直近の源泉徴収票は昨年度の収入を反映するものですから、当年度に減収があった場合には反映されないこととなってしまいます。

そのため、減収があった場合には、直近の収入を証明する必要があるということになります。

例えば調停では、直近の給与・賞与明細や労働契約書(転職した場合等)を提出することになります。

この証明は必ずしも容易なことではありませんが、後述する事情変更との兼ね合い上、減収が具体的に見込まれるにも関わらず、その主張をしなかった場合には、当該減収を理由に婚姻費用や養育費の減額が認められない余地があるため、必ず主張する必要があります。

すでに、婚姻費用や養育費が決定している場合

減収が「事情の変更」に該当する場合には、変更することが可能です。

既に、婚姻費用や養育費が決定している場合には、減収があったからと言って必ずしも婚姻費用や養育費が減額されるわけではありません。

婚姻費用や養育費が減額されるには、「事情の変更」(民法766条3項、民法880条参考)があった場合に限られ、具体的には「①協議又は審判の合意又は判断の基礎となった事情に、当該協議又は審判の当時予測できない変更があり、②法的安定性の観点を踏まえても、これらを維持することが相当でない場合」(婚姻費用の事案で東京高等裁判所令和1年12月19日決定の引用)「①その協議又は審判の基礎とされた事情に変更が生じ、②従前の協議又は審判の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至った場合」(養育費の事案で広島高等裁判所令和1年11月27日決定を引用)を指すとされています。

つまり、平たく言えば、婚姻費用や養育費が決定時点で、①(予測ないし)前提とされていなかった事情の変更である必要があり、②金額を変更しなければ不相当な程度に大きな変更である必要があります。

そのため、①決定当時に既に具体的に発生していた事情(退職していた、転職していた等)、②婚姻費用や養育費が1万円下がる可能性がある等といった軽微な変更は、これに該当しないものとされています。

手続き面に注意が必要です。

婚姻費用や養育費が決定している場合には、調停や公正証書で決まっているかにかかわらず、調停手続きを利用することをお勧めします。

なぜならば、多くの審判例において、当事者双方の公平と明確性の観点から、調停申立時からの変更が認められているからです。

調停を起こさずに、協議している期間については、場合によっては、変更が認められない可能性があり、注意が必要です。

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