離婚する際に住宅ローンは影響がありますか。【令和4年5月最新版】

離婚における住宅ローン問題は大きく3つに分けられます。

「離婚をする際に住宅ローンはどうなりますか。」というご相談は頻繁に寄せられます。

おおむね、①住宅ローンを組んだ後に離婚をする場合に、住宅ローンを返し続けなければなりませんかという質問と、②住宅ローンという負債がある場合に、財産分与に影響しますかという質問と、③婚姻費用・養育費に影響しますかという質問の3つの疑問を持つ方が多いようです。

①離婚後に住宅ローンを返し続けなければなりませんか?

まず、①「離婚をした後に住宅ローンを返し続けなければならないですか」という質問に対しては、銀行との契約の内容次第ですという回答になります。

相談者が住宅ローンの契約者(名義人)、連帯債務者、連帯保証人になっている場合には、銀行との関係で負債を負っているのですから、返済する義務があります。連帯債務者や連帯保証人である場合には、離婚相手が返済し続けるという約束をすることもありますが、離婚相手が返済を怠った場合には、やはり返済をしなければならなくなります。銀行は、離婚相手が払わないから支払えないという言い分にこたえてくれることはありません。

そこで、まずはローンの連帯債務者や連帯保証人になっているかを確認するため、銀行との金銭消費貸借契約書(保証会社がある場合には保障委託契約書)をチェックすることをお勧めします。

そして、連帯債務者や連帯保証人である場合には、契約者がローンの借り換えを行うことで、連帯保証人・連帯債務者問題を解消できるかを検討することになります。

②住宅ローンが財産分与額に影響しますか?

住宅ローンの負担は、財産分与額に影響します。

②「住宅ローンという負債がある場合に、不動産以外の財産分与に影響しますか」という質問の答えは、「影響する可能性が高い」が正解であると考えます。

実務上(調停や和解で決定する場合)には、夫婦の実質的共有財産の価値を計算する際に、不動産の価格から住宅ローンの残金額を差し引いて不動産の価値を計算し、財産分与額を決定することになります。

近年、議論が深まっている分野であり、住宅ローンを他の財産と通算させるか、負債を他の配偶者に負担させるかといった論点があります。

しかし、オーバーローンの場合、特に住宅ローンの金額が住宅ローンの契約者側の総財産の金額よりも大きい場合には、住宅ローンを不動産以外の財産と通算して考えるのか(通算説)、それとも通算せずに不動産以外の財産で財産分与を考えるのか(非通算説)という問題が発生します。

財産分与は、「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して定める。」(民法768条)としか規定されていないので、どちら考え方を採用するか明文の規定はありません。

かつては、オーバーローン部分を他の財産と通算しない見解も有力で(非通算説)、この見解に沿う裁判例もありますが、現在は通算する考え方(通算説)の方が有力だと思われます。

さらに、近年では、さらに発展して住宅ローンの夫婦の純財産がマイナスの場合に他の配偶者に対して負債の分担を求められるかという問題も議論が深まっています。

負債の分担に関しては、双方に収入がある場合には、負債の分担も考えられるとされており、今後有力な考え方となっていく可能性もあります。

①婚姻費用・養育費に影響しますか?

住宅ローンの負担は、権利者が住宅に居住し、義務者がローンを支払っている場合、婚姻費用に影響するのが原則です

③婚姻費用・養育費を支払う側(義務者)が、住宅ローンを支払っている不動産に婚姻費用を請求する側(権利者)が住んでいる場合には、基本的には影響します。

婚姻費用・養育費を請求する側(権利者)は、家賃を支払わずに、住宅を利用している一方義務者は2重に住居費を支払っているため、調整する必要があると考えられています。

ただし、住宅ローンの支払いは、夫婦が共同して作った負債の返済という側面だけでなく、返済することで資産の形成されるという側面もあります。そのため、単純に住宅ローンの金額を婚姻費用から差し引くのではなく、次のような方法が考えられています。

まず、権利者が住宅ローンの義務者ではない場合には、住宅ローンを特別経費と考えて義務者の年収から差し引いて算定表にあてはめる方法、住宅ローンの支払いの何割かを婚姻費用から差し引く方法、婚姻費用のうち住居費相当額を差し引く方法等様々な方法が考えられています。

なお、義務者が有責配偶者で、義務者が自ら自宅を出た場合には、住居費の控除しないという考え方もありますので、注意が必要です。

養育費との関係では、元配偶者所有の不動産に居住するという意味で、何らかの調整がされる可能性が高いです

次に養育費ですが、義務者が住宅ローン付き不動産を取得し、権利者に引き続き自宅に済む場合に、住宅ローンの負担(権利者が義務者名義の住宅に住むことによる負担)を考慮するということになります。

一例として、居住費者(権利者)と所有者(義務者)が賃貸借契約を締結して賃料を定めるケースや、居住者(養育費権利者)と所有者(養育費義務者)が使用貸借契約を締結した上で、婚姻費用と同様に住居費相当額を差し引くというケースもあります。

いずれにせよ、婚姻費用の段階と異なり、義務者の権利者に対する扶養義務は消滅しており、権利者にとって義務者所有の住宅は他人所有の住所ということになります。そのため、住宅の所有者に帰属し(権利濫用とならない範囲で)権利者に退去を求めることも可能なのですから、賃料相当額を差し引くことがベースとなると考えられます。

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