年金受給者の婚姻費用はどのように計算されますか

年金収入の婚姻費用

年金収入がある場合、婚姻費用はどのように計算されるのでしょうか。

婚姻費用は、裁判所では、簡易な算定をするために「算定表」を用いて算出することが多いです。具体的な婚姻費用の考え方や「算定表」については、こちらを参照してください。

裁判所においてよく利用されている「算定表」には、「自営」(自営業者)又は「給与」(給与所得者)を選択するようになっており、年金に関する記載はありません。年金収入がある場合には婚姻費用をどのように算定すればよいのでしょうか。

年金収入は「給与」と同様に婚姻費用の算定の基礎となります

年金収入は、給与収入と同じように定期的な収入です。

年金収入の有無、金額は夫婦間で異なります。夫婦の年齢差によっては夫婦間で支給対象者かどうかの違いが出てきますし、夫婦のうち一方の社会保険料が高かった(就労していた時の給与が高かった)場合には、厚生年金の掛け金が高かったことになり、年金受給額が高くなります。

婚姻費用分担義務は、義務者は権利者に義務者が営んでいる生活と同じ程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)ある以上、夫婦間で異なる年金収入を考慮した上で生活費の分担を調整する必要があり、年金収入は「給与」と同様に婚姻費用の算定の基礎となります。

年金受給額を「給与」としてそのまま算定表に当てはめると、年金受給者の収入を過小評価することになります

一方で、算定表や標準算定方式において、年金収入を給与収入と同様に捉えて、婚姻費用の額を計算してしまうと、年金受給者の収入を過小評価することになります。

なぜならば、給与所得者は、年金受給者と異なり、給与所得者として就労するために必要な出費(これを「職業費」といいます。)を支出する必要があり、年金受給者よりも収入を生活費に使用できる割合が小さいからです。

より具体例に示すのであれば、サラリーマンは、仕事をするためにスーツ代、会社の懇親会の会費、会社や取引先とのゴルフに係る費用を給与から支払う必要がありますが、年金は特別な支出がなくとも、隔月で年金を受給することが可能であるということです。

年金受給者の婚姻費用の算定方法

算定表のもととなる標準算定方式では、婚姻費用は、給与所得者に関しては収入(総支給額)のうち、職業費、公租公課、特別経費を除いた、おおむね総収入の42%から34%が生活費として使用できる割合(基礎収入割合)であると考え、それを各世帯の生活指数(大人は100、14歳以上は95、14歳未満は55)に応じて分割し、計算します。

例えば、夫が給与所得で年収200万円、妻が0円である場合を例に説明します。200万円の基礎収入割合は40%とされていますので、200万円の40%である80万円を夫婦の生活費として分け合うことになります。そこで、80万円×100(夫の生活指数)÷200(妻の生活指数)=40万円(月額3万3333円)が夫が妻に分担すべき婚姻費用となります。

先ほど、年金受給者は「職業費」がかからないことを説明しましたが、標準算定方式では収入(総支給額)のうち約20%(厳密には19%から20%の間)が「職業費」とされています。

そのため、夫が年金受給者で200万円の収入がある場合には、基礎収入を200万円に対応する40%に職業費分20%を加算した60%として計算すべきことになります。年金収入200万円のうち60%である120万円を夫婦の生活費として分け合うことになりますから、120万円×100(夫の生活指数)÷200(妻の生活指数)=60万円(月額5万円)が夫が妻に分担すべき婚姻費用となります。

この考え方は、大阪高裁の裁判官であった論文に紹介されている考え方であり、実際に同方式に類似した考え方により審判がされた例もあります。

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